号外「本当に安心?住宅瑕疵担保履行法」
こんにちは住宅検査カノムの長井です。
今回はいつもの欠陥事例紹介とは違った内容を
お伝えします。
「本当に安心?住宅瑕疵担保履行法」
住宅瑕疵担保履行法が平成21年10月1日から施行
詳しくは下記
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/index.html
住まいを守る法律としてのうたい文句ですが、
現在も一部の工務店などでは同じような
瑕疵保険を掛けています。
ただ、実際に瑕疵が発覚した場合、
保険の支払いにおいてトラブルがあるのも事実です。
本当に安心か判断していただくため懸念事項を
列記させていただきます。
1、故意か重過失の瑕疵は保険対象外に
飲酒運転での事故は自動車保険が
使えないのと同じ事ですが、
住宅の場合、
重大な瑕疵のほとんどは故意、又は無知か過失です。
これらが保険対象外で保険の意味があるのでしょうか。
途中に保険法人からの現場検査がありますが
過去、トラブルになった場合の例を見てますと
「検査時確認できなかった」
「一部見るだけで全数検査していない」
「役所の検査は合格している」など
検査責任逃れをし、結局、保険対象としない。
瑕疵が発覚し、原因調査の結果、
重過失、軽過失の判断の境も微妙でしょうし、
故意、重過失と判断されるケースがほとんどになる
懸念がある。
この保険の掛け金は業者負担が原則ですが
実際は消費者の負担となるでしょう、
負担が増えた上にカバー範囲が狭い保険では
一番メリットがあるのは消費者ではなく
指定される保険法人ですね。
2、保険適用範囲
瑕疵担保責任、10年保証の範囲同様で
「構造上主要な部分」 と 「雨漏り」に限定。
構造上主要な部分の瑕疵はまず、素人ではわからない。
姉歯マンション偽装事件なども住民が気が付いた訳
ではないですね
・・・ほとんどが内部告発です。
構造の瑕疵は、完成後に私のような建築士が家を調べて
発覚する事がほとんどです。
大地震、台風で被害が出るまでわからないでしょう。
また、雨漏りに付きましても
最近の高気密、高断熱化の影響で壁内で起きた雨漏りが
表面に出て来るのが遅く、10年過ぎて新築当時からの
雨漏りがわかった例もあります。
これ以外
造成地の擁壁の倒れや
土のみの沈下
シックハウスなど
の重大な問題には保険は適用されません。
3、設計ミスの場合は?
設計図面の間違い、設計監理者の指示による瑕疵は
現行でも保険対象外(故意、重過失)である。
保険を掛けるのは施工業者であり、自社設計でなく
設計が分離していた場合は
特に、関係のない事で済まされるでしょう。
4、保険金の上限は2000万円
もし、保険が認められても、
建替えが必要な工事になった場合など
これで足りないでしょう。
5、工事中に発覚した瑕疵は?
今年、相談を受けた例ですが
工事完了前にトラブルになり正式な引渡しを
受けないまま入居。
その後、第三者の建築士の調査で構造的に
建築基準法に違反している事が発覚。
業者が無視するため保険会社へ連絡を取った所、
「まだ、保険証を発行していない
=工事中の問題であり保証できない」との返事が。
建物が完成してからの保証であり
工事途中は対応できないでしょう。
他にも考えますといろいろまだ、ありそうです。
姉歯マンション偽装事件で
売主、施工会社の倒産から被害者が自己負担で補修を
余儀なくされたケースから今回、作られた法律ですが
これで安心と思った方はみえるでしょうか?
今年に入ってからも私はいろいろなトラブルを見てきました。
・退職金をつぎ込み、耐震補強工事をお願いしたのに
工事して逆に弱くなった家
・デザインを優先するため、建築基準法の構造を無視した
設計の家
・確認申請の厳格化により工事が開始できないため
無申請でさらに構造計算までも省略した家
・擁壁が沈み傾いた家
・地盤が沈下し杭の周りが空洞になった家
・壁が少ないため風で揺れ、ひび割れ多数の家 など
これらはもし、保険制度があって実際救われたかと思うと
すべて上記のような理由で、無理だったのではと思います。
家の購入で人生つまずかないためにも
結局は「自己防衛」しかない
過去の建築基準法の改正では
改正前の家は切捨てられてきた。
無料耐震診断、補強費補助という制度が一部あるが
十分ではない。
学校、病院、老人ホームを改革している
居酒屋チェーンで有名なワタミの渡邉社長の著書にもありますが
「もう、国には頼らない。」 (日経BP社)
この理念を共感して「自己防衛」で家作りに望むべきでしょう。